2004年度活動報告

NO.3

【学習院大学から現地学習交流に】

現地学習交流写真

学習院大学の川嶋辰彦教授が被差別部落の現地学習に来られました。 (6月26日から27日) この時に「今度はぜひ学生たちも」という話になり、川嶋ゼミの学生たちが、10月15日から17日にかけて豊田村と長野市内の被差別部落で交流学習を行いました。

豊田村では少しでも部落の食文化にふれようと、一緒に食事を作ったり、一緒に汗を流そうと畜産関係の仕事を一日したり、 解放子ども会の保護者会と焼肉交流、夜は部落の家に泊まり、また語ったりと「気を(長野市内の部落で)つかわないように、気をつかおう」とにぎやかな出会いの場がありました。 最終日には、長野市内の被差別部落の現地学習を当センター理事の星沢さんに案内と説明をしていただきました。

この3日間の交流で「あなたにとって部落って何」と問う場面設定もあったり、川嶋教授から「知らないことの罪」 (たとえば部落問題なら、その差別の現実を「知らない」と言う人)についてソクラテスの話もあり、受け入れた側も大変学習になりました。

後日学生から「毎年行きたいが受け入れてほしい」という申し入れもありました。

【ホームヘルパー(2級)養成研修】

昨年度に引き続きホームヘルパー(2級)養成研修を、9月25日(開講)から12月18日(閉講)の約3ヶ月間の日程でおこない、16人が受講されました。

ホームヘルパー養成研修写真1 ホームヘルパー養成研修写真2

「 資格を取っても、働くのはちょっとねえ」といっていた受講生たち。 研修がすすむに連れどんどん顔つきが変わっていきました。最後には、「福祉の職場につきたい」と、いうことも変わりました。130時間勉強するってすごい!

【人権センターが企画・運営等事務窓口に】

第42回長野県部落解放研究集会

研究集会写真

10月20日長野市内で、第42回長野県部落解放研究集会実行委員会(8団体構成)が開かれました。

実行委員会から依頼を受け、2005年1月に開かれる研究集会の企画・運営等事務窓口をNPO法人人権センターながのが行うことになりました。

差別の現実を中心的課題として集会内容を提案しました。

この研究集会は差別に苦しみ、差別と闘う部落の人たちによってスタートし、共に取り組んでいく仲間をうみだし、42回という歴史を刻んできました。

(実行委員会)

部落解放への取り組みは、生々しい差別の現実から深く学ぶことを一貫して実践してきました。

だからこそ今部落差別の現実を再認識し、今後の方向を議論していかなければならないと思います。

【第2回信州沖縄塾】

信州沖縄塾写真

信州沖縄塾主催の第2回信州沖縄塾が11月27日、長野市・県労働会館で行われました。

当センター理事の横田雄一さんやハンセン病問題に取り組む伊波敏男さんたちからの取り組み要請を受け、会員の皆様にご案内させて頂きました。 参加のみならず会員の皆様には当日の会場準備はじめ、運営にもお手伝いをいただきました。ありがとうございました。

「沖縄の痛み、平和をつくり出す」と題した平良夏芽牧師の講演。 辺野古からの命と人間、そして日本と世界、本当に奪い返していかなければならない今いる自分自身の闘いを、その厳しくも誇りある現場から伝えてくれました。 (こうした抽象的な言葉ですいません)

「日本に戦後がありますか」この問いに私たちはどう答えているか、その現実をつかみ切れていない自分たちの「平和」という「ういた言葉」と現実が問われました。

来年2月にも上田で第3回、そして継続していくことでしょう。また皆さんに御案内致します。

【教育部会の取り組み・「同和教育」の検証】

教育部会の発足が7月4日に行われて以降、約80人の会員登録がありました。

教育部会では世話人会と「同和教育」の検証委員会を設置し、定期的に会議をしてきました。

その検証内容については、現在検証項目と検証の視点を議論し、大筋での項目設定と方法について方向を示すことができました。
(詳細については現段階では明らかにできませんが)来年度中には出版する予定です。

今わたしたちのまわりでは「これからは同和教育から人権教育だ」などとあたかも「新たな時代を迎えた」かのように言葉だけの「人権教育」が叫ばれています。 同時に「人権教育といわれても何をやればいいのか・・・」という現実の声も聞かれます。

 こうした「声に」応えていく前に、それでは本県における半世紀以上も積み重ねてきた「同和教育」とは何か(何だったという過去形ではなく)、その検証をし、今「差別の 現実は」を深く見つめていかなければならないのではないでしょうか。

<教育部会の活動日誌>
  5月 9日 教育部会発足の打ち合せ
  6月19日 教育部会発足準備会
  7月 4日 発足のつどい
  7月19日 世話人会
  7月27日 東日本研究集会のスタッフ打合せ会議
  8月16日 東日本研究集会レポート検討(以降数回の検討会)
  8月21日 東日本研究集会
  8月28日 世話人会
  9月11日 世話人会
  9月19日 世話人会
 10月11日 検証委員会
 10月24日 検証委員会
 11月 6日 世話人会
 11月23日 検証委員会
 11月27、28日 全国人権同和教育研究大会
 12月 1日 事務スタッフ会議
 12月 4日 教育部会全体会議、林竹二講演記録映画上映会

【林竹二 講演記録映画上映会(in長野)】

上映会写真

12月4日、長野市・県勤労者福祉センターで「林竹二講演記録映画上映会」を行いました。

関東・授業を考える会からの呼びかけにより、当センター教育部会が取り組みました。

正直なところ「長野で林竹二をやっても誰も来ないのでは」でも「一人でもつながればいいか」と思って行った上映会でした。

信濃毎日新聞の文化欄で報道されたこともあって、県内から多くの問い合わせがありました。

そして、今まで一度もお会いしたことのない人たちが「林竹二」によって出会うことができました。

また、県内だけではなく、東京はじめ、石川県、大阪や遠くは兵庫県からも参加していただきました。

本当に感謝・・・いやそのエネルギーにびっくりしました。

「人とつながっていく」というこれからの人権センターの活動におおきなヒントを与えてくれたように思います。

【人権の視点  介護を語る会】

12月18日、「老親」のビデオ上映会のあと、「介護を語る会」を行いました。

2級ヘルパーの受講生たちも参加し、長野市の山口文枝さんに介護体験を語ってもらいました。

山口さんは昨年看取ったおつれあいとの人生を語りながら、「どんなに頑張っても、見送った後には悔いが残る」 「介護は人柄が出る、どんなに上手にやるより、ヘルパーさんが入ってこられる時の笑顔によってどんなに救われたか」 とこれからヘルパーとなる受講生たちにエールを送ってくれました。

介護にあたるお一人お一人にそれぞれの人生があり、そのことを大事にすることを教えてくれました。

【企画・講師派遣事業】

さまざまな分野において研修会等への講師依頼や企画依頼が数多くありました。

人権センターでは講師依頼があった場合についても、参加対象者や研修意図など現実の問題を当事者の視点をもって、 共に実践していける方向を具体化するために、相談者側に企画提案をしてきました。

たとえば、長野教育事務所の研修においては、人権と福祉の視点から高齢者問題と部落問題について対談とワークショップ的に設定したり、 現地における視察学習を取り入れたり、山之内町における「人権と福祉のまちづくり」のための実践体験学習の企画提案などを行ってきました。

「毎年やっているから」という「行事化」になりかねない研修内容を、主催する担当者と相談のうえ、より具体的な実践研修を一緒に企画運営していこうと思います。

さらに、人権センターながのからさまざまな機関・団体などに「こうした企画で研修を行いませんか」という企画提案(費用見積もり含め)等を行いました。

かなり「やる気」の返事などもあり、これからも、待ち受けだけでなく、提案持ち込みを行っていきたいと思います。

同和教育研究集会写真1 同和教育研究集会写真2

2月8日、山之内町人権・同和教育研究集会に、廣沢里枝子さんの講演「盲導犬と街に生きる」と、「ガイド体験をしてみましょう」を企画し、講師派遣を行いました。

「ガイド体験をしてみましょう」では、町の有志の方に出て頂き、町中で視覚障害者と出会った時のガイド、商店では、ホテルではと、場面に合わせたガイドの仕方を学びました。

有志の方のお一人は、つい「あちら、こちら」と案内してしまい、「わかっていてもやってしまいますねえ」と苦笑いしながら、実際にやってみることが大事ですねと感想をもらしていました。

中山町長も最後まで参加されていました。

【相談支援事業の取り組み】

さまざまな人や機関から数多くの相談があります。

但し、皆さんに報告ができないのが相談支援事業です。

当事者たちとのかかわりと、了解を得て報告可能な内容については総会の機会等においてお伝えします。

人権センターながのでは、継続した支援を行い、歩む取り組みをしていきたいと思っています。

さらに相談をされた人が、こんどは共に支援し歩んでいけるスタッフとしてつながっていきたいと思います。

【調査研究事業・情報提供事業】

@住民意識調査と実態調査の依頼については、いくつかの市町村から相談があり、 調査項目と内容の検討を行い、実際に調査する際のおおまかな見積もりなどを提示してきました。

A人権・福祉実態調査についても、調査項目を本年中に設定する予定で作業をすすめています。

B部落史調査委員会については7月4日に行いました。 <本年度はなかなか調査委員会の行動日程がつかず、申し訳なく思っていますが、本来の月一回ぺースをめざして計画していきたいと思っています。

C人権センターながのホームページが8月からかたちだけですが公開しました。 「工事中」が多くご迷惑をおかけしています。

【「障害者差別撤廃条例」制定にむけ】・【「人権条例」制定との関係】

9月21日長野県庁講堂で「障害者差別禁止に関する講演会・シンポジウム」が、 長野県、NPO法人ヒューマンネットながの、長野県障害者生活支援事業連絡協議会の主催で開催されました。

そのなかで「なぜ障害者差別禁止法が必要なのか」というシンポジウムがもたれ、本県において「障害者差別撤廃条例」制定を求める方向が確認されました。

この「条例」制定をぜひ実現したい、そう思いました。

一方、部落解放・人権政策確立に向けた本県はじめ全国的な長い運動において、国における「人権教育・啓発推進法」の制定、 「人権擁護法案」抜本修正をめぐる攻防と廃案、そして「人権侵害救済法」の制定をめぐる今日の状況や、これまでの運動で培われてきた視点、 例えば、国の責務や国民的課題、被差別者のたち上がりの視点、第三者機関の設置などたくさんあることを考えたとき、 正直言って本県における運動の連帯と連携の必要性を感じています。

「障害者差別禁止条例」制定については、県の担当課が「制定に向け前向きに」と言っています。

一方長い間求めてきた「人権条例」(市町村では「部落差別をはじめあらゆる差別をなくす条例」)には全くと言っていいほど反応を示してこなかった事実。

この集会でこんなことを感じました。

ただ感じているだけでは何もすすみませんので、接点を見つけていきます。

【インド・ダリット コミュニティーセンター建設支援の報告】

4月11日に行いました建設支援のつどいにおいて皆様から231,030円のカンパを寄せて頂きました。

コミュニティーセンター建設の場所や建物も決まり、中間報告がきました。

(人権センター会員にはすでに文書で報告させて頂きました)ファティマさんからのメールによれば、アナコラム区アナンサプラム村にセンターを建設中とのことです。 (完成後写真等が送られてきましたら、またお伝えします)

ご協力ありがとうございました。これからが、また大事です。

よろしくお願い致します。

【第42回長野県部落解放研究集会】

2005年1月26日、第42回長野県部落解放研究集会が千曲市・上山田文化会館で行われました。

(本研究集会の企画運営等事務関係を、研究集会実行委員会から NPO法人 人権センターながのが依頼を受け、窓口をさせていただきました)

部落解放研究集会写真1 部落解放研究集会写真2 部落解放研究集会写3

講演「仕事保障のないところに人権は育たん」―私の歩んだ人権・福祉の運動―と題して、高知市労働事業協会理事長の森田益子さんは 「差別が貧乏をよび、貧乏が命を奪った」仕事保障が部落解放の本質的課題と強調され、自身の仕事保障の闘い、そして人間を大事にする福祉事業の取り組みを紹介されました。

「連続・大量差別ハガキ事件」について部落解放同盟東京都連の浦本誉至史さんから、生々しい事件の状況や犯人が捕まる経過など詳細に報告がされ 、犯人は警察の取り調べで「私は法に触れないようにやっている。 『殺す』などとは一度も書いてない。 『死ね』という願望を書いたまでだ」とまで言っていることが報告されました。

語る「かたれない、だから伝えたい」と題し、4人の部落の高校生からは被差別体験やそれぞれの「部落とは」が丁寧に伝えられました。

「部落を嫌いに思っている自分」「そんな自分を認めたくない自分」「部落を嫌いだと思っている自分がいやで、そして『誇りに』思いたい自分」など、 いままでにない一人ひとりの「部落」と差別が「かたれない、からこそ伝えよう」という4人の部落の高校生、「葛藤している自分、語ることで自らを解放したい自分」がそこにありました。

提案では@「同和教育」の検証について、人権センターながの教育部会の浅井誠さんが報告。 A「三位一体改革」いま隣保館事業が・・・では県隣保館連絡協議会会長の高野清雄さんから報告がされました。

みなさんありがとうございました。

翌日の新聞(信濃毎日新聞)を見て私は少し(いや、かなり)びっくりしました。

上記のような具体的生々しい差別の現状が伝えられた集会なのに、新聞は「県との関係、それも事業と財政面」という内容のみがとりあげられたのです。

この集会に参加した人たちも思ったことでしょう。

私たちNPO法人人権センターながのとしての取り組みの視点がここにもあるように思いました。

【解放子ども会「カリキュラム実践事例」案】

「一人ひとり思っていること、抱えていることがちがうからこそ、その子にそった解放子ども会の内容」「一律化した運営内容などは間違っている」など、私はたびたび話をしてきました。

たしかに今もそう思っています。

しかしいま、解放子ども会は様々に運営や内容までも変わり、正直言って中心的支援者であった「同推教員」がいなくなり、 「やってはいるが、何をやっていいのか」「継続性もない」「だから、教材すら具体性がない」など現場からの声が聞かれます。

「それならお前がやれよ」と言われても「こうあるべき」という言葉だけ言っていても実際には係わりきれな私がいます。

このままでは・・・そんな思いから解放子ども会が「段階的にめざすカリキュラム実践事例」があったら、と思い、現在教育部会で検討を進めています。

実際には検討案ができあがっています。

当事者はじめ多くの人たちに早急に意見をいただき、現状のなかで、「活用」していける部分は参考にして頂ければと思っています。